Alone in the room
with the statue of Venus
I couldn't resist
cupping her breast.
It was cool
and heavy in my hand
like an apple.
published in "The Man Who Was Marked by Winter"[1991]
木の実
ポーラ・ミーハン
部屋でひとり
ビーナス像といると
どうしても
彼女の胸に手をあてがいたくなった。
冷ややかなのに
重みを感じる、
まるで林檎のように。
(藤井わらび訳)
[memo]
非常にシンプルな詩。それだけに象徴が生きている。
ビーナスは美や母性、林檎は(球状の)全体性、完結を表わす。楽園で林檎を食べた事件により、人はそこを追放されるが、それは「不死」の象徴である林檎をもいだことで死がもたらされたと考えることもできる。
詩人は静まりかえった部屋にひとりでいて人恋しいのだろうか。母に甘えるようにビーナスの胸に手をぴったりとあてがう。それは彫像でしかないので冷たいが、人の故郷を想わせる重さを感じさせるのだ。
憂いなき楽園(あるいは母の胎内)への郷愁がテーマであろうか。それでも、どこかエロティックである。