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シェイマス・ヒーニーを読んで

最近思い立って
アイルランドの詩神、シェイマス・ヒーニーの詩「秤にかけるWeighing In」(『水準器The Spirit Level』所収)を訳し直し、初めて詩論めいたものを書いてみた。
昨年の文学研究会で発表したのに、そのまんま放ってあったのが気にはかかっていたので。

それで、このブログのことも思いだした。
とかく物忘れが激しいこの数年間。いつも皆さんおつき合いありがとうございます。

文学研究会 http://blogs.yahoo.co.jp/litteralite
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by Fujii-Warabi | 2009-04-29 00:59 | リンク集

ディラン・トマスの詩「あの快い夜のなかへおとなしく流されてはいけない」

   Do Not Go Gentle Into That Good Night
                          Dylan Thomas


Do not go gentle into that good night,
Old age should burn and rave at close of day;
Rage, rage against the dying of the light.

Though wise men at their end know dark is right,
Because their words have forked no lightning they
Do not go gentle into that good night.

Good men, the last wave by, crying how bright
Their frail deeds might have danced in a green bay,
Rage, rage against the dying of the light.

Wild men who caught and sang the sun in flight,
And learn, too late, they grieved it on its way,
Do not go gentle into that good night.

Grave men, near death, who see with blinding sight
Blind eyes could blaze like meteors and be gay,
Rage, rage against the dying of the light.

And you, my father, there on that sad height,
Curse, bless me now with your fierce tears, I pray.
Do not go gentle into that good night.
Rage, rage against the dying of the light.


 あの快い夜のなかへおとなしく流されてはいけない
                           ディラン・トマス
                           鈴木洋美 訳 

あの快い夜のなかへおとなしく流されてはいけない
老齢は日暮れに 燃えさかり荒れ狂うべきだ
死に絶えゆく光に向かって 憤怒せよ 憤怒せよ

賢人は死に臨んで 闇こそ正当であると知りながら
彼らの言葉が稲妻を 二分することはなかったから 彼らは
あの快い夜のなかへおとなしく流されていきはしない

彼らのはかない行いが緑なす入江で どれほど明るく踊ったかも知れぬと
最後の波ぎわで 叫んでいる善人たちよ
死に絶えゆく光に向かって 憤怒せよ 憤怒せよ

天翔ける太陽をとらえて歌い
その巡る途中の太陽を悲しませただけだと 遅すぎて悟る 気性の荒い人たちよ
あの快い夜のなかへおとなしく流されてはいけない

盲目の目が流星のように燃え立ち明るくあり得たことを
見えなくなりつつある目でみる いまわのきわの まじめな人たちよ
死に絶えゆく光に向かって 憤怒せよ 憤怒せよ

そしてあなた ぼくの父よ その悲しみの絶頂で
どうかいま あなたの激しい涙で ぼくを呪い祝福してください
あの快い夜のなかへおとなしく流されてはいけない
死に絶えゆく光に向かって 憤怒せよ 憤怒せよ


※松浦暢編『映画で英詩入門』(平凡社、2004)より

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先日、おかばぁで隣の席にいた、イギリス人のシェリーさんご夫妻に教えていただいたのが、この詩。
ディラン・トマスの代表作で、病床の父をうたったものだそう。
でも、激しいプロテスト・ポエムでもあります。
イメージが重くて、いいですね。これ以外のものも読んでみたいと思います。

ディラン・トマスを原文で、いくつか読めるサイト
http://www.artofeurope.com/thomas/index.html

ディラン・トマス自身による朗読が聴けるサイト
http://www.youtube.com/watch?v=rHHqA1CJLCs&feature=related
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by Fujii-Warabi | 2009-04-22 10:53 | 英詩・アイルランド詩・英語詩

『紫陽』17号評

『現代詩手帖』4月号、渡辺玄英氏の詩誌月評に『紫陽』17号より
鈴川夕伽莉さんの「針の風 凪の檻」が取り上げられています。
坂口安吾の「文学のふるさと」に通じるさまざまな問題を考えさせられる作品、
とのことです。
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by Fujii-Warabi | 2009-04-16 10:06 | 紫陽の会

ポーラ・ミーハン「Reading the Sky 空にうらなう」


Reading the Sky
                            Paula Meehan


We stood in the still pine shadows
with nightshade and yarrow
and read the cyphers the wild geese drew

across the violet sky.
Go south, go south, they insisted,
winter is close behind.

The moon was for a moment
a perfect golden sickle
above the golden lake.

We measured the angles of the stars
revealed by the dwindling light
and gave to them new names

learned from the geese in flight
knowing that one would follow,
one would be left behind.

We glean a common language
to describe our differing fates:
you'll be fugitive forever,

I'll wait at the brink of winter
holding off the dark
that you may escape.


†“The Man who was Marked by Winter” (The Gallery Press, 1991, Ireland)所収。


   空にうらなう
                             ポーラ・ミーハン              
                             藤井わらび訳 

私たちはハシリドコロとノコギリソウの生い茂る
しんとした松の木蔭に立ち
紫の空を横切ってゆく

雁の暗号を読み解いた
――南へ行け、南へ行け
冬が背後に迫っている――

月は今のところ
黄金の湖上に輝く
完璧な黄金の鎌だった

私たちは光が次第に弱まりゆく
星と星との角度を測り
新しい名前をつけた

そして飛行する雁から聞かされた
一人は後を追い
一人は取り残されることを知っていると…

私たちは懸命に共通の言葉を拾い始める
二人の異なる運命を表すために
――あなたは永遠に逃亡者となるだろう

私は冬の崖っぷちで待つだろう
あなたが逃げてゆく
その闇から身を離して――


〔シンボルの注釈〕
l1 pine      マツ 〈象徴〉不滅性、長寿、豊穣
  shadows    陰、影法師、かげり、亡霊 〈象徴〉死、幽霊
l2 nightshade  ナス属の有毒植物 〈象徴〉
  yarrow    (セイヨウ)ノコギリソウ 
l3 cyphers    暗号、ゼロ
l8 sickle     鎌 〈象徴〉刈り入れ、死、武器
l10 stars 星、星回り、運勢、運命 〈象徴〉運命、希望、理想
l11 dwindle だんだん小さくなって消滅する、縮まる
l17 fates     運命、究極的末路、死、破滅
l18 fugetive   (官憲・危険などからの)逃亡者、避難民、亡命者、変わりやすい(fading)、はかない(momentary)
l19 brink (絶壁・崖などの危険な)縁、端、(破滅の)瀬戸際

【参考文献】アト・ド・フリース著『イメージ・シンボル事典』(山下主一郎他訳,1984,大修館書店)
◆ポーラ・ミーハン Paula Meehan  1955年、ダブリンの下町生まれ。ダブリン在住。現代アイルランドを代表する女性詩人の一人。詩集に『帰還すれば咎めなし“Return and No Blame”』(1984年)、『空にうらなう“Reading the Sky”』(1986年)、『冬の刻印を受けた男“The Man who was Marked by Winter”』(1991年)、『ピロー・トーク“Pillow Talk”』(1994年)、『ダルマカーヤ“Dharmakaya”』(2000年)などがある。その他、長年刑務所で受刑者とともに創作ワークショップを行ってきた経験から生まれた戯曲『セル“Cell”』(2000年)がある。いずれも未翻訳だが、栩木伸明著『アイルランド現代詩は語る』(2001,思潮社)に数編の訳詩が掲載されている。2006年10月、夫で詩人のテオ・ドーガンとともに来日。


※『紫陽』11号(2007.1.20刊)より
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by Fujii-Warabi | 2009-04-09 08:59 | 英詩・アイルランド詩・英語詩

ディスレクシアについて

こちらは盆地ですので、朝晩の冷え込みはなかなか厳しいのですが、
桜も咲き、どこからともなく沈丁花の香りもして、
春らしくなってきましたね。

早いもので、『紫陽』18号の締切まであと一週間ほど。
私はここ数年『紫陽』のために詩を書いている感じです。
もっと様々な分野の勉強をして考えて創作をしたいのですが、
文字を操るのがなかなか大変です。

そう、最近気づいたこと。
どうして文字が読みにくいときがあったり、読み間違いをよくする、
文章を音読するのが苦手なのだろう、
音を聞いても理解しにくいときがあるのだろう、
と悩んでいる中、「ディスレクシア」という障害を新聞記事で知った。
(これも今まで間違えて読んでいて、「ディクレシア」だと記憶していた。
少々読み違えていてもネット検索には引っかかってくれるから有り難い。)
これは読み書き、聞き取りなどの「失読症」のことで、
学習障害の一種、脳の働きが多数者とは違うことで起こるらしい。
遺伝的な要素もあるとのこと。
私の場合は軽いけれど、色々と思い当たることがある。
まず文字がぎっしりのものはしんどい。
文字がところどころ入れ替わったり、かすんで見えにくく、
文字が飛んだりすることがある。
行間が狭いと、隣の文字などがたくさん目に飛び込んできて読めない。
特にカタカナと数字が苦手。
「ディクレシア」と「ディスクレシア」の読み分けは難しい。
一字一字がはっきりと見えないので。
アルファベットも読み分けがなかなか難しい。
でも、単語が一つずつ分かれているので、一語を写真か図柄のようにして暗記している。
大学時代、英文学科で詩などを選んだのも、
実は文章がすらすら読めないから、詩なら短くてじっくり見つめられていいだろう
という不純な(?)理由が最初にあった。

ディスクレシアには、文字すべてがかすんで見えない人、
反転した文字として目に映る人もいるとのこと。
そんなわけで、私も(?)反転した文字(鏡文字というやつ)を書いてみた。
カタカナ・数字はこちらのほうが読みやすく書きやすく、しっくりくる。
漢字は鏡文字の方が書きやすいものもあるし、
そうでないものもある。
ひらがなは難しいもののほうが多い。
ただ、鏡文字を読んだり書いたりして気持ち悪くなる、ということはないし、
「通常」の文字も鏡文字も私には同じような感じで、違和感もない。
楽しく書ける。読める。

何が書きやすく、何が書きにくいかを調べてみれば、
何が読みやすく、何が読みにくいのかがわかるような気がした。
どうやら一定の法則があるようだ。
ひらがなでは「も」や「と」や「を」が書きにくい。
逆に、カタカナはどれも書きやすい。
英語では「through」「though」「thought」の見分けが困難だ。
なぜなのか?
おそらく、丸みに目が引きつけられてしまい、そこを強く記憶する癖があるからだと
思う。
例えば、「も」なら下の丸み、「を」ならまん中と下の丸み。
「through」「though」「thought」なら「o」と「g」の円に引き寄せられ、
「r」「t」は見えにくくなる。
カタカナは直線が多いので、どれも見えにくく、区別がつきにくい。

でも、悪いことばかりではないようで、
ウィキペディアには
「一方でディスレクシア障害者は一般人に比べて映像・立体の認識能力に優れていると言われ、工学や芸術の分野で優れた才能を発揮している者も多い。これは左脳の機能障害を補う形で右脳が活性化しているためと考えられており、最近は若年者の治療において障害の克服と共にこうした能力を伸長させる試みも行われている。」
と書かれている。
確かに私は、音の聞き取り・記憶力も悪いということもあって、
映像・絵画・立体作品が好きだ。
イメージする力も強い。
結局、「障害」などと名付けるのは社会の側であって、
こういうのも個性としてみんなで楽しめればいいと思う。
人間の脳は複雑である分、差異が大きく、それは豊かさであるはずだ。
私も鏡文字から裏側の世界を楽しむとしよう。
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by Fujii-Warabi | 2009-04-02 13:29 | 身辺雑記