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『ヘルダーリン詩集』

最近読んだ詩集では、『ヘルダーリン詩集』(岩波文庫、川村二郎訳)が良かった。特に「パンと酒」。一行一行が深く、今の私では読みきれない。ヘルダーリンの詩は不思議な力を持つ。愛と光が頭の中にぱーっと広がり、とても心地いい。しかし、現代に溢れる「癒しの詩」ではない。彼の思想と信仰と学問が基本にあり、それゆえ難しい。だが、どこまでも人間性への信頼や共感があり、それが脳のどこかへどっと響いてくる(その感覚は神がやってくる時に似ている)。だから何度も何度も読みたくなる。また、川村二郎氏の訳が格調が高く非常によい。私も少し訳詩をしてみたが、ヨーロッパ言語と日本語は全く違うので、とても難しい仕事だ。ヘルダーリンの素晴らしい詩が読めるのは川村二郎氏のおかげでもある。
ヘルダーリンは自由を希求し、放浪したが、そのあたりもまさに詩人だと思う。私はあいにく虚弱体質なので体はあちこち行けないけれど、その分、心はいつもどこかへ行っている。寝て見る夢もあまりにリアルで、魂が体から抜けているのではないかな、と思ってしまう。「またあそこへ行こうよ」と言いかけて、あそこはどこだったかな?と考えると夢の中で歩いた町だったりする。
ヘルダーリンは一生の付き合いになりそうだ。
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by Fujii-Warabi | 2006-12-16 23:49 | 芸術鑑賞

『イル・ポスティーノ』

『イル・ポスティーノ』。イタリアが舞台の美しい映像にゆったりと流れる時間。詩的な映画だった。この映画の見所は詩人ネルーダによって、イタリアの片田舎の貧しい青年が触発され、当たり前だと思っていた景色を、この世界を捉えなおし、詩人となってゆくところだろう。詩とはなにかが描かれているように思った。誰もが詩人になれば、世界は必ず変わる。
この映画を観たのは11月23日だった。しかし、パブロ・ネルーダ役のフィリップ・ノワレ氏はその日に76歳で亡くなられた。なんだか因縁めいたものを感じた。彼は、『ニュー・シネマ・パラダイス』の映写技師役で有名なフランスの名優。『イル・ポスティーノ』でもオーラが出ていた。ネルーダといえば、彼の姿が浮かんでくる。こんな名優を亡くすことは非常に悲しい。ご冥福をお祈りいたします。

(私は現在、失語症のようだ。)
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by Fujii-Warabi | 2006-12-08 16:28 | 芸術鑑賞