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最近観た映画

私は映画鑑賞も趣味なのですが、体調がここ数年悪く映画館に足を運べない状態なので、最近はレンタルビデオなどで映画を観ています。
10月ぐらいからモーレツに映画が観たくなり、それからは週に1、2本のペースで観てきました。私の好みは社会派ドラマや芸術映画ですが、これらは最近ツタヤではめっきり少なくなり、どこで良質な映画ビデオが適正価格でレンタルできるのだろう?と困っています。ウエットなフランス映画も好きなのですが、フランス映画というジャンル分けすらなくなって、有名なゴダールの作品さえも庶民の手の届かないものとなりつつあるような気がします。
さて、この一ヶ月で観たもので心に残った作品を挙げますと、『仕立て屋の恋』、『視線のエロス』、『フリーダ』、『めぐりあう時間たち』、『アマデウス』、『イル・ポスティーノ』です。『仕立て屋の恋』と『視線のエロス』は深夜放送を録画したもので、あとはレンタルしました。
『仕立て屋の恋』は以前から気に掛かっていた映画でしたが、こんな怖い映画だとは思いませんでした。仕立て屋は繊細で非常に無口な男性で、それゆえ町では嫌われ者です。そして、嫌われ者であるがゆえに何の証拠もないのに若い女性の殺人容疑者と決めつけられ刑事に付け回され、町では嫌がらせに合うのです。集団ヒステリーが静かに描かれており、それがとても怖かったです。この作品はカメラワークも芸術的で、「純愛」だけのテーマでない所が良いと思いました。
『視線のエロス』、この作品は奈良放送のラビリンスシアターという金曜深夜の番組で放映していました。この映画は、最初から最後まで主役の男性の目線で撮られており、一組のカップルのストーリーだけでできている、珍しい映画でした。フランス映画ならではといえるかもしれません。恋愛にエロスだけを求める妻子持ちの中年男性と不倫はしないという健全な若い女性の付き合い始めとその破局を描いているのですが、ミュリエルというヒロインが理性的なチャーミングな女性で、かなり面白かったです。一般に、男性が妻の元へ帰るとき、不倫相手の若い女性の方は泣き喚いたりしてドロドロの悲劇になるのですが、ミュリエルはこの映画で一度も涙を流さず、恋をそれなりに楽しんで、新たに素敵な恋を成就させ自分から去って行ってしまうという展開がこの映画の見所の一つであったと思います。そして、お金もあり浮気者でうぬぼれ屋の主役男性・フランソワは、女性に去られて生まれて初めて恋愛を知り苦悩するわけですが、その最後のシーンが「恋愛とは?」という答えのような気がしました。 (つづく)
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by Fujii-Warabi | 2006-11-28 00:06 | 芸術鑑賞

『紫陽』第11号の原稿締め切り

『紫陽』第11号の原稿締切日は12月10日(必着)です。よろしくお願いします。
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by Fujii-Warabi | 2006-11-25 10:56 | 紫陽の会

神の子猫

ツナ缶を夢中で食べた
その子はぐっすり眠る
私のクッションの上で
我が家に無事に辿り着いた小羊のように

幾多の誘拐の企みが失敗に終わったのも
きっとこの子の帰りを待っていたから
もう二度と別れたくない と私は泣いて
雨宿りは一生いっしょにこの家ですることにした

高い死の峰を越えた時
神様から授かった白い同行者
その全身は愛と好奇心で満たされた
猫の姿を借りた 幼い妖精

何度捨てられても 死にそうにひもじくても
大切なことは忘れずに
私の家を選び いとも軽々と運んできた
裏切られて擦り切れかけた 私の心に

永い雨が降っていた
この子を家から追い出さないように
魔の闇へと放り出さないように
裏切られた私がもう復讐しないように

永い雨が降っていた
雨を止める祈りに留まらず
黒い夜雨のトンネルを潜(くぐ)り抜けた
この子の白さを私は学ばねばならない
遠くからでも光る強靱さを



※紫陽の会『紫陽』10号(2006年9月20日)掲載
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by Fujii-Warabi | 2006-11-01 16:48 | 藤井わらびの詩

脱走

 干からびゆくひらきうなぎは強張った躯をぬたくらせ灼爛のアスファルトの坂道を下る。〈煮えたぎる太陽が真上に来る時、銀のまな板の上で首を切り落とされる運命だった。〉うなぎはバケツを倒して逃げたスケープゴート。追っ手の罪人に気づかれる前に池へ、池へ必死で戻らねば…。アスファルトの上で躯の水分はみるみる奪われてゆく。厳格な太陽によって。「早く! 早く!」 焦っても硬まりゆく躯。まな板の処刑よりはマシなのか…。うなぎが何をしたというのだ。
 陛下の従順な下僕、罪人はようやくバケツがカラなのに気がついた。血相を変え、冷や汗を流し、坂道を転がるように追ってくる。「女王陛下からやっとのことで免罪符を戴いたのに! あのこしゃくなうなぎめ!! 命を懸けてでもあのうなぎを捕らえねば、メンツも立たないし、いい笑い者だ!」 男は全力疾走、元の池に辿り着き、シャツも脱がずに飛び込んだ。                                (正午まであとわずか)
 うなぎは路肩の溝へ入り、躯に充分な潤いを戻し膨らんだ。もう彼は惨めなうなぎの干物などではない。水に帰ればこちらのもの。うなぎは元の池を目指してゆうゆうと泳ぎ始めた。

 満月は潮を操り、うなぎを呼ぶ。生に水を与えるのは月の役目。白いほのかな光を浴びながら、うなぎは月をほっと見つめた。



※紫陽の会『紫陽』9号(2006年5月20日)掲載
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by Fujii-Warabi | 2006-11-01 16:46 | 藤井わらびの詩

ふえる・うえる・かえる

うちのアルベールはいつもにっこり
おなかぽっこり
とても愛らしいフランスがえるさんなのです

街にはかえるさんグッズが増えています
うちにはさんしょう魚のなごみちゃんまでいます
疲れた都会人はそののどかさに癒されているのです

かえるさんは田んぼや川から姿を消しかけています
こんな薬漬けの環境に耐えきれず
かえるグッズへと魂を移し替えざるを得なくなったのです

オプティミストのかえるさん
それでも笑っていたいのです
末永く生き続けたいのです
今日も店頭で山積みにされ、にっこり微笑んでくれます
古里を捨てた私に

かえるさんは貧しい人々が大好きです
心ばかりでなくおなかにだって住めるから
グゥーグゥーグゥー
イの中のかえるさんは鳴きます
もう外の世界へは戻れません
泣きたくなったら
グゥーグゥーグゥー
生き続けます
貧しい人々の体に乗り移り
クワを翳(かざ)してたたかいます



※紫陽の会『紫陽』8号(2006年1月20日)
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by Fujii-Warabi | 2006-11-01 16:40 | 藤井わらびの詩

ガラスの涙

夕霧の降りそそぐ中
ふたりは閉ざされたまま佇んでおりました
 だめなのね
わたしはガラスの涙を流しました
 あぁ
彼は凍えそうなガラスに目を背けました


わたしは王に仕える
アンドロイド
プログラムされた人工頭脳
胸の高鳴りさえ
規則正しい機械音

彼はもうすぐ息絶える
命短くともたくましい羽
(以前も同じだったわ ごめんなさい)

地も吸わぬ偽物の涙を流すうち
彼は使命の空へと飛び去ってゆきました



※紫陽の会『紫陽』6号(2005年5月20日)、詩人会議グループ風歌『畑からのあいさつ』18号(2006.9.22)掲載
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by Fujii-Warabi | 2006-11-01 16:38 | 藤井わらびの詩