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のっぺらぼうの風船

風船たちはふわりふわり いつの間にか飛んでいってしまったのです
わたしの手を離れ よくわからないどこかの街へ
しっかりと握りすぎていると潰れるし
緩すぎると そう こういう風です

風の吹くままに飛んでゆくのでしょうか
右から吹けば右へ
昨日から吹けば昨日へ

風船たちよ ここにいなさいよ
言っていたのに いつの間にかいなくなる
あのとき叩き割ったほうがよかったのかしら
右へ昨日へと吹かれてゆくよりも
風をつくるにはわたしの力は少し足りないかしら
でも もうそれ以外には道はないのです
赤い丸を一つつけられたのっぺらぼうの風船たちには



※紫陽の会『紫陽』第4号(2004年9月)掲載、一部改稿
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by Fujii-Warabi | 2006-10-31 00:01 | 藤井わらびの詩

純白の花嫁

純白のドレス
足早の父に腕を引かれ
穢れた足で歩くバージンロード
(この道はどこへ続くの?)
わたしは見知らぬ男の隣りに並んだ
どうやら結婚式が始まるようだ
(いったい誰の?)

神父は語りかける
「健やかなるときも病めるときも……よき夫となることを誓いますか?」
「はい、誓います。」
誰か奇声を発してくれ
この「結婚」は偽物だと
どうして進むのだ?
神は沈黙しているのか?

どしゃぶりの雨が止まない
花嫁はずぶ濡れだ
せっかくの衣装も台無し
しかし何故こんなものを着せられてしまったのか?

鐘が鳴り響く
変色したドレスがざわめく
何故鐘は鳴り止まない?
頭が割れるようだ
 いいだろう
この素性のわからぬ男に殺されるのも
ただ殺人者には……

血に染まった男
の手が私の首に食い込む
これが神を冒涜したわたしへの罰なのか



※詩人会議グループ風歌『畑からのあいさつ』第12号(2004年9月28日)掲載
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by Fujii-Warabi | 2006-10-30 23:59 | 藤井わらびの詩

ナチス雲に覆われた空

雨粒は雪のようにやわらかく
     結晶のように美しく
   しゃぼん玉のように膨らむ

雨は止まない
人々は雨水を天の恵みのように受け入れ
みな同じ顔になってゆく

区別などなくともよいのだ
人々にとっては
あいまいさの心地よさに酔い
長時間労働の疲れを癒す
それが悲劇の回転だとは知らずに

「脱落者」はさらに下を見て
安心を得ようとする
雨粒のこと
空のことなど何も気づかずに

「今年は不作だ。
 稲はすべて枯れてしまった。
 この雨はもしや……。」
大地とともに生きる者は気づいている
自然の循環ではないことに

目を大きく開(あ)けてごらん
雨粒は鉤十字の形をしているから
   夢を喰い、無邪気を無気力へと変えてしまうから
   胸で殺意を静かに膨らませてゆくから

侵された人間は「生」の支配という暴力を振るい出す

                               (二〇〇三年九月一二日)



※紫陽の会『紫陽』3号(2004年5月20日)
※倉橋健一責任編集『イリプス』13号(2004年6月)
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by Fujii-Warabi | 2006-10-27 23:26 | 藤井わらびの詩

冬を生き抜くために

暗闇に閉じこめられたとき
その子は震えた
たとえ私のにおいがしたにせよ
バタンと閉まるドア
(猫が闇を怖がる?)
その子は一歩も踏み出しはしなかった

すり寄りながら
長い路のりを旅してここにきた
〈さあ、おなかいっぱいお食べ〉
ただ その子は食事目あてでついてきた
わけじゃなかったようだったけれども

昼間姿を暗まし
長い闇を幾晩越えても
恐ろしい暗闇
私はそんなことも知らなかった
「のら猫にエサを与えないで下さい」
嫌がらせのようにエサ場に立てられた看板
フィデル、あなたは読んだんだね?
閉ざされた闇は絶滅収容所
生とは あの革命家のように
闘いだ
冬を乗り越えるには
寒さ、そして人間との闘いだ

また、あそこに動物愛護ポスターを貼ろう!
冷酷な役人の心にも
生ゴミのように捨てられたあの子たちのために



※大阪詩人会議『軸』第79号(2004.3.10)
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by Fujii-Warabi | 2006-10-27 23:16 | 藤井わらびの詩

やわらかな雨を

胸の震えが止まらないまま
ゆるやかな坂道をのぼる
風雨にゆれている
うすももの紫陽花
コスモスの若葉に囲まれた
大輪がいくどもおじぎする
いま あの人はこんなにもやわらかな雨をうけているでしょうか

「あれから悲しい思いでいっぱいです」
人生は急な登り坂
時にはそんな言葉が漏れるのでしょう
けれども
いつも海は山を抱(いだ)いているのです
あの時 それを強く感じました

海は悲しいブルーをしています
山は恵みをうけつつも
海のふらす雨とともに自らの水を流すだけです
そして 海はそれをもうけ入れるのです

海はうす紅の雨雲を創り
今日も人々にやわらかな雨をふらします



※大阪詩人会議『軸』78号(2003.11.10)、紫陽の会『紫陽』2号(2004年1月20日)
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by Fujii-Warabi | 2006-10-23 10:50 | 藤井わらびの詩

楽しみの天才

君たちの表情を見ていると
涙が止めどなく頬を伝うんだ
人間に笑わされた顔

君たちの姿を見ていると
僕の少年時代を思い出すんだ
家と学校に閉じ込められ
過剰な「協調」を求められた日々

人間以上なんだ
君たちは
殺し合いをせず、争いすらせず
何事も前向きに考える
楽しむ天才なんだ

  解  放

人間の道具にするな!
僕たちの心など癒さなくともよい
それは僕たち自身の問題なんだ
君たちは君たち自身のイルカ生を謳歌してほしい



※詩人会議『詩人会議』2003年11月号(vol.41)「自由のひろば」入選作品
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by Fujii-Warabi | 2006-10-23 10:39 | 藤井わらびの詩

「シャヒード、100の命」展によせて

わたしが「わたし」ではなく「35」
ならばイヤだ
わたしが「わたし」ではなく「11428」
でもイヤだ

この社会のありとあらゆる人々が、物が
数量化され
個体を亡くしてゆく

身分証明証が今月あたり
発行されるという
ただ生を管理するために
ただの数字にするために

100の命
“100”
観るまでは大きな数字ではなかった
けれども
百人には
百人のストーリーがあり
百人のドラマがあり
百の顔を持つ
その家族・親族・友人は何十人にも
何百人にものぼるのだ

重すぎる
一つの命には何百もの
何万もの命が関わっている

9・11のみの偏ったストーリー
うまく仕立てられたドラマ
(お涙ちょうだいもの?)

「イマジン」
ジョン・レノンの歌がよく歌われた
流された
その人の生きた時代から少しも進歩していない証拠だろうか

でも
イマジン
想像を働かせるより他にないのだ
情報操作されたなかでは
難しいことかもしれない

次には
シンク
考えてほしい
百人の命を、顔を
殺されなければ・・・、ということを

遺品はそのきっかけとなろう

                                (二〇〇三年八月二九日)



※「シャヒード、100の命」展は、2003年10月7日~19日大阪人権博物館リバティ大阪にて開催されました。URL: http://www.shaheed.jp
この詩はリンク集にあります。

※紫陽の会『紫陽』2号(2004年1月20日)、風歌『畑からのあいさつ』9号(2003.11.1)掲載作品
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by Fujii-Warabi | 2006-10-23 10:34 | 藤井わらびの詩

私たちはより人間

ねぇ、お姉さん
そんなに心配することも、そんなに怒ることもないのよ
だって、私たちのそばには神さまがいらっしゃるから
必ず報いられるものなのよ

明日は終戦記念日ね
多くの精神障害者が餓死していったわ
彼らは邪魔者として隅へ追いやられ
「生きる」ことを奪われた
今も光が当たらない

私たちは最期まで生きましょうね
浮かばれない先輩たちの分まで取り戻しましょうね
私たちが「生きる」社会は豊かになる
先輩たちの祈りを実現させましょうね
私たちは人間
より人間

                        (2001年8月14日)



※全国「精神病」者集団vol.29、no.3(2003.6)、紫陽の会『紫陽』創刊号
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by Fujii-Warabi | 2006-10-16 12:35 | 藤井わらびの詩

私を支える大地

人の温かさを受け入れられなくなっているときは
もう自分ではないでしょう
ただ振り返りアラ探しばかりはじめた
それはもう過去の自分でしょう?
緑が噴き出るこの大地に
「幸せ」が求められないはずがないでしょう
夢を差し出してくれる生命(いのち)たちに
「果て」などないでしょう?

自分が信じたこの道を歩いてゆけばいいのだよ
と踏みしめた一粒一粒が教えてくれる
小さな目線が私の足を支える
ひとりで歩いているなんて傲慢でしょう?
あなたがたがいつもいる
その限り私は歩いてゆけるでしょう



※大阪詩人会議『軸』76号(2003.3.20)
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by Fujii-Warabi | 2006-10-16 12:33 | 藤井わらびの詩

小さな若葉に

こんなに小さな若葉でさえも
一心に光へと手を伸ばす
私たちは間違っているのだ
水がほしくて差し出した手に
爆弾を握らせる
子どもたちは生きる源を教えてくれるのに
年月を空費しただけの私たちの
何と愚かなことよ
「何か」を起こさないよう
日頃からの地道な水まきこそ大切なことなのだ



※詩人会議『詩人会議』「青い窓」2002年3月号(vol.40)
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by Fujii-Warabi | 2006-10-16 12:29 | 藤井わらびの詩