神の子猫

ツナ缶を夢中で食べた
その子はぐっすり眠る
私のクッションの上で
我が家に無事に辿り着いた小羊のように

幾多の誘拐の企みが失敗に終わったのも
きっとこの子の帰りを待っていたから
もう二度と別れたくない と私は泣いて
雨宿りは一生いっしょにこの家ですることにした

高い死の峰を越えた時
神様から授かった白い同行者
その全身は愛と好奇心で満たされた
猫の姿を借りた 幼い妖精

何度捨てられても 死にそうにひもじくても
大切なことは忘れずに
私の家を選び いとも軽々と運んできた
裏切られて擦り切れかけた 私の心に

永い雨が降っていた
この子を家から追い出さないように
魔の闇へと放り出さないように
裏切られた私がもう復讐しないように

永い雨が降っていた
雨を止める祈りに留まらず
黒い夜雨のトンネルを潜(くぐ)り抜けた
この子の白さを私は学ばねばならない
遠くからでも光る強靱さを



※紫陽の会『紫陽』10号(2006年9月20日)掲載
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by Fujii-Warabi | 2006-11-01 16:48 | 藤井わらびの詩
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