ナチス雲に覆われた空

雨粒は雪のようにやわらかく
     結晶のように美しく
   しゃぼん玉のように膨らむ

雨は止まない
人々は雨水を天の恵みのように受け入れ
みな同じ顔になってゆく

区別などなくともよいのだ
人々にとっては
あいまいさの心地よさに酔い
長時間労働の疲れを癒す
それが悲劇の回転だとは知らずに

「脱落者」はさらに下を見て
安心を得ようとする
雨粒のこと
空のことなど何も気づかずに

「今年は不作だ。
 稲はすべて枯れてしまった。
 この雨はもしや……。」
大地とともに生きる者は気づいている
自然の循環ではないことに

目を大きく開(あ)けてごらん
雨粒は鉤十字の形をしているから
   夢を喰い、無邪気を無気力へと変えてしまうから
   胸で殺意を静かに膨らませてゆくから

侵された人間は「生」の支配という暴力を振るい出す

                               (二〇〇三年九月一二日)



※紫陽の会『紫陽』3号(2004年5月20日)
※倉橋健一責任編集『イリプス』13号(2004年6月)
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by Fujii-Warabi | 2006-10-27 23:26 | 藤井わらびの詩
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