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パスの詩

  夜明け 
          オクタビオ・パス

冷たくてすばやい手が
闇の包帯を
ひとつずつほどく
ぼくは眼をひらく
        それでも
ぼくは生きている
        まだ生々しい傷の
中心で


※真辺博章訳『オクタビオ・パス詩集』(土曜美術社出版販売、1997年)より


MADRUGADA
                 Octavio Paz

Rápidas manos frías
retiran una a una
las vendas de la sombra
Abro los ojos
todavía
estoy vivo
en el centro
de una herida todavía fresca


DAWN

Cold rapid hands
draw back one by one
the bandages of dark
I open my eyes
still
I am living
at the center
of a wounded still fresh


※Carcanet Press"OCTAVIO PAZ Collected Poems:1957-1987" edited and translated by Eliot Weinberger


[memo]
傷は他者の目には治ったように見え、すばやく包帯が解かれる。
でも、心の傷は容易に治るものではない。
本人のみが痛みを知っている。

タイトルは「夜明け」。
闇の包帯が解かれて、剥き出しの傷のまま生きてゆかねばならない。
その覚悟ができているから、このタイトルなのだろうか。
by Fujii-Warabi | 2011-08-14 19:43 | 詩人・芸術家の紹介
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