地球は実はぐるぐる回っているし、ぐらぐら揺れている。
それを感じられるこの季節。
春先にはばりばりと心の兜が割れる音がする。
痛いけれど、それがなくては、大きくはなれない。
眩暈と胸の痛み。憂い。
そして、気狂い。
これを乗り切るために一年がある。
成果を試す時が近づいてきた。
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難聴
藤井わらび
路は導火線となり
鼓膜の中で華がパチパチ鳴っている
わたしは灼熱の海に投げ出された蝸牛
携帯電話を耳にあて
結ばれるのを待っている
その大切な人は声
便器の奥から噴き出すペリカンのような
“カムカム”
そういえばかめかめという補聴器があった
招かれても一寸先は炎
“わたしの声きこえてる?
今月の水光熱費はらえるかしら?”
“ヒヤヒヤ、ヒヤヒヤ”
―――ここはそこよ。
せっかく見つけた魚が燃えていた
※『紫陽』16号(2008.9)より